高層マンションの多い都市圏では子どもがベランダなどから転落する事故が相次ぎました。
高いところに生活していると慣れが生じ恐怖心がなくなる「高所平気症」の子どもが増えていると専門家は指摘しています。
そこでマンションに住み子育て中の家庭に向けて、高所平気症について解説します。
高所平気症とは
高いところが怖いという感覚は生まれつきではなく、高さに慣れることができるため、高層マンションで育つ子どもは高所に対する恐怖心が薄くなる傾向にあります。
子どもたちは4歳までに高い所が危険だという感覚を身につけるのですが、最近では遊具が撤去される公園が増え、高所の危険を学ぶ機会が少なくなっています。
そのため、高い場所が怖いという感覚が養われないまま成長してしまうことがあり、特に高層マンションのように、あまりにも地面から遠く、高さが判断しづらい空間で生活する子どもたちは、「高所平気症」になりやすいとされています。
高所平気症は病気なのか?
「高所平気症」は医学用語ではありません。医学界ではほとんど知られていない状態であり、また医療で治療対象になるわけではないので、医療上の病気とはないわけです。
「高所恐怖症」を語源にした対義語的な表現であり、一部の教育研究者が使用しています。
医学関係者の中には、「平気」という言葉を使うことに否定的な意見もあるようです。
特に3~4歳は要注意
東京消防庁のデータによると、平成27年度から令和元年の間で起こった5歳以下の転落事故は年齢別でも多い結果となっています。
子どもは身長のうち、頭を占める割合が大きいのが特徴です。少し下をのぞき込むだけで転落の恐れがありとても危険です。
また、転落死の統計は男女比が2対1で男児が多く、発生する時間帯は16~17時が多くなっています。
高所平気症を予防するには
マンションの高層階に住む家庭は、エレベーターを使って移動するのが基本です。
エレベーターだと一旦乗ってしまえば、高さを感じることなく一気に住んでいる階や1階まで運んでくれます。
高層階に住む人にとって必要な乗り物ですが、生活経験の少ない子供にとって、高所感覚の発達の遅れやマヒにつながるのです。
ですので、子どもと外出するときはあえて4~5階で降りて、後は外階段で1階に降りていくという予防法があります。
高さ感覚を養う方法は外遊びです。公演に行けばすべり台やジャングルジム、ブランコなどあります。
この高さで飛び降りるとケガをするという経験から危険を回避する能力が養われていくのです。
このような神経感覚は4歳で大人の80%、小学校入学時には90%のレベルに達します。つまり未就学児の間に外遊びを通して神経感覚を発達させなければ、後からでは難しくなるわけです。
窓を開ける機会が増える時期は注意
子どもが室内に取り残される状態で転落事故が多いそうです。
特に窓を開ける機会が多い5、6、9、10月は子どもが高所からの転落事故が増えるといわれているので注意しなければなりません。
子どもは親がいなくなると不安に耐えられなくなり、親を探します。
親が外出しているとわかればベランダから外を覗こうとするのです。
転落事故を予防するために、ちょっとの時間だからといって子どもだけを残して外出するのは極力避けたほうがいいでしょう。
転落事故を防ぐには
子どもがひとりでベランダに出てしまわないように、常に施錠することを心がけましょう。
子供の手が届かない場所に補助錠をつけるのも有効です。窓が少し開く状態で補助錠のロックが掛かるようにすれば風通しもできます。
ベランダにはなるべく物を置かないようにしてください。
また、親がベランダに出れば子どももついてくることがあります。目を離した瞬間、事故に遭う可能性があるため子どもに対して背を向ける姿勢は取らないようにしましょう。
できるだけエレベーターは使わない
先ほどの通りエレベーターを使うと高いところにきたという感覚がなくなります。
高いところにきたという感覚を身につけさせるためにエレベーターを使わず、階段を使って昇り降りさせましょう。
4歳前後であれば高所平気症を改善できるはずです。
ベランダに物は置かない
都市部のマンションを中心に、限られた居住スペースを有効活用するためにベランダに椅子やテーブルを置き、おうちカフェや晩酌を楽しむライフスタイルが提案されるようになりました。
しかし、ベランダに子どもで登れる高さの物が増えることで、転落事故のリスクが高まっているとの指摘もあります。
他にも自転車やすべり台など子どものおもちゃも置かないようにしましょう。
エアコンの室外機は、手すりから60cm以上離すように設置してください。
言葉や態度で注意を
高いところに登ってはいけないと言葉や態度で伝えます。
言葉が通じない段階であっても、小さなうちから高いところに登ってはいけないと教えていくことが大切です。
家庭によって教育方法や方針は様々ですが、命の危険にかかわることなのである程度、厳しく教えていきたいところです。
もしも子どもが高い場所に登ってしまったらどのように伝えるのか、家庭の方針を決めておきましょう。
子どもの好奇心を満たしてあげる
子どもの乳児期から幼児期は基本的に現実と非現実の区別が曖昧だったりします。絵本の中の鬼や狼を怖がり泣いてしまうのはそのためです。
そして、子どもは好奇心の塊です。空飛ぶキャラクターのアニメの真似をして、ベランダから転落した事例もありました。
テレビやゲームばかりだと、ひとりになったときや外で遊ぶときに、好奇心を満たそうとして、高いところや狭いところなど危険な場所で遊ぶ傾向にあります。
余計な好奇心を生まないためにも、一緒に遊んであげることが大切です。そうすることで子どもは危険な場所で遊ぶことはしなくなるでしょう。
どのようなシチュエーションで事故が起きているのか
東京消防庁によると、発生した転落事故は以下のようなシチュエーションで発生しています。
- 母親が近くのコンビニに買い物へ出かけている間に、マンションの12階で留守番していた4歳の女児がベランダから転落
- 母親が兄弟の忘れ物を届けに1階へ行っている間に、マンションの10階で留守番していた4歳の男児がベランダから転落
専門家によれば、どちらも親がいなくなった不安から、探し出そうとします。親が外出しているとわかれば、ベランダから探そうとするのだそうです。
転落事故を防ぐためにも、就学前の子どもだけでの留守番はできるだけ避けましょう。
子どもが転落してしまったら
大人がどれだけ注意を払っても、不慮の事故が起こってしまうことはありえます。もし転落してしまったら、どのように対処すればいいのでしょうか。
全身をチェック
まずは全身を細かく確認しましょう。転落に限らず事故の際、頭をぶつけていないか見ると思います。
しかし、頭部以外にも出血や腫れ、骨折、打撲などのケガを負っている可能性があります。
病院へ行く、救急車を呼ぶ
身体のどこかがおかしいと思えるなら必要に応じて病院へ行きましょう。意識を失っていて一刻を争うような状態であれば、ためらわずに救急車を呼びましょう。
救急車を呼んでいいのか迷うなら、子ども電話医療相談「#8000」へ連絡し症状を伝え、指示を仰ぎましょう。「これくらい大丈夫だろう」と自己判断はせず、必ず病院へ診察してください。
転落数時間後はとくに注意を
転落直後は平気そうに見えても、時間が経過するにつれて不調が現れる場合があります。転落直後も転落数時間は注意しながら変わったことがないか見てください。
その後も1~2日は子どもの様子を見るようにしましょう。元気がない、おう吐するなどの症状が見られたら、すぐに病院へ。
むちうちのように見た目でわからない症状の場合、時間の経過で不調が増すこともあるので、しっかりケアしてあげてください。
高所平気症の結末!?死のセルフィー
10~20代の若者の多くが当たり前にやっている自撮り。いい写真を撮って、ネット上にアップすれば大勢の人に見てもらえます。
しかし、この自撮りですが、2018年9月に発表された国際調査で、2011年から2017年にかけて259人が自撮り中に亡くなったそうです。
自撮り中にどうして亡くなったのかというと、崖の上や山頂、ビルの屋上など普通に生活していれば行くことがない場所で撮影中に亡くなっています。
いわゆるインスタグラマーやユーチューバーです。再生回数を稼ぐために危険な場所で撮影した結果、事故に遭遇してしまうケースが世界中で起きているのです。
死亡事故原因は溺死、交通事故、落下事故が挙げられます。その他にも感電死、火災、重火器、動物に襲われるなどさまざまです。
そして、死亡事故が起こった場所は高い山の頂上、高い建物、湖という結果でした。
各国では、このような事故を防ぐため、自撮り禁止の地域を決めているそうです。
死亡事故の例
次にどのような事故が起こったのか紹介します。
自撮り中の夫婦が転落
インド国籍でアメリカ在住の夫婦が、観光スポットのカルフォルニア州ヨセミテ国立公園の断崖「タフト・ポイント」で転落死する事故がおきました。
この夫婦は危険なスポットを訪れ自撮りするというブログを運営しており、自撮りを試みようとしたそうです。
当局が捜査したところ、崖から約243メートル下の地点で2人の遺体が確認されました。
62階建てのビルからぶら下がり懸垂するチャレンジで失敗
中国のエクストリームスポーツ階の第一人者を自負していた男性が62階建てのビルの屋上でぶら下がり懸垂をするチェレンジを行った結果、戻ることができず落下し死亡するという事故が起きました。
このチャレンジはネットを通じて配信されており、中国のみならず全世界で取り上げられます。
以前から高層ビルや絶景ポイントで話題になったこともあり、危険な技をこなしてきましたが、このような結果に終わっています。